コンサル的思考実験と読書メモブログ

ITコンサルタントが身を持って学んだこと、フレームワークの使い方、書評などを挙げていきます。IT企業や企業内IT部門の管理者やリーダ層の方、ITコンサルタントを目指す方に参考になる情報発信できればと思います。

ITIL活用によるコスト削減〜インシデント発生数の予測方法

今回はITツールに登録されたインシデントのデータを使ってデータを分析する事により、コスト削減を行った事例を挙げます。

 

今回の事例でのコストは要員の人的コストを示しています。あるシステム運用の現場で運用アウトソーサーとして前の業者から移管されたものの、当初の見積もりを超えて業務量があり、想定を超過する要員で対応していることから赤字案件となっていました。

想定を超える業務量と言っても、常に超えているではなく、閑散期はむしろリソースに空きがある状況でした。しかしながら現場として忙しい時に基準で人を抱えたいので、現場のマネージャーに相談してもNOを突きつけられてしまいます。

 

そういった背景の中でデータをどう使ったのか。まずは今後見込まれるインシデント数の予測を出して、そこに要員数を算出、要員数が多くかかる月のインシデント発生要因を潰しこむ事でインシデント削減→要員削減→コスト削減といった流れを取りました。

 

インシデント予測の方法ですが過去一年間のインシデント件数がわかる場合、月別に件数を出していき、全体の中央値を求めます。

平均値,中央値,最頻値の求め方といくつかの例 | 高校数学の美しい物語

 

平均値ではなく中央値である事がポイントとなります。ベースとなる件数を中央値で算出して、中央値に対して各月の係数を算出します。3月4月は1.7倍、2月は0.9倍といった感じです。

 

この月の係数こそが月別のインシデント発生トレンドとなります。もちろん新システムのリリースなどで変動したり、大規模な障害が発生すれば変わりますが、不確実性に振り回されては身動きが取れないので、わかる範囲で係数をいじってもいいと思いますが一旦はトレンドを基準に考えて良いと思います。

 

出来るだけ、同年度の中央値を取った方が精度は上がります。実績的には平均誤差率で8%の精度で予測できました。

 

上記の手法で見込みのインシデント数を出して上限となっているところが要員数を抱えるきっかけとなる部分となりますので、上限となっている月のインシデント削減に入っていきます。

 

件数規模にもよりますが、シンプルに行うなら一件一件眺めて、分類を分けていくことでどういったインシデントが多いかわかります。実際に行ったのは3月4月は人の異動で申請系の業務が多く発生するで、その部分の問い合わせを減らすために情報発信用のイントラサイトのページを作ったり、人の役割ごとに期日までに対応すべき事項などのガイドを策定、ChatBotの導入、申請業務の一部RPA活用などの効率化や、端末の事前調達によるキッティング負荷の分散などの取り組みによってインシデント発生数の削減、平準化を行いました。

 

結果として件数が減ったことだけでなく、説明のガイドなどをヘルプが案内する事で効率的に対応が取れた事で、一次解決率や平均対応時間、工数が劇的に向上するといった効果もありました。

 

このようにデータを活用すれば事前対策が進みます。溜められたデータをどう活かすか。マネージャーとして出来る事は多いはずです。取り組んでみてはいかがでしょうか。